月次の数字が出るのが遅い会社へ。「正確な試算表」を待つのをやめる

経営管理のご相談をいただくと、かなりの確率で最初に出てくる話があります。

「数字が出てくるのが遅い」

月次の経営会議が毎月下旬にある。ところがその会議で使える確定した数字は、前々月分まで。今月が5月なら、議論しているのは3月の結果です。

2か月前の話をして、打ち手を決める。その打ち手が実行される頃には、また1か月が過ぎている。

これでは経営が後手に回ります。

なぜ遅くなるのか

原因はたいてい、正確な試算表を待っているからです。

税理士事務所から試算表が届くのを待つ。減価償却も引当も反映された、決算に耐える正確な数字。それが出てから会議資料を作る。だから遅くなる。

ここで多くの会社が考えるのが「税理士を変えれば早くなるのでは」ですが、その前に試すべき方法があります。

「正確な数字」と「経営判断に使う数字」を分ける

ある支援先で、経営管理の現状をヒアリングしたときのことです。

数値管理を担当されている方から「試算表が遅い」という課題を伺い、続けてこう聞きました。

「社内で完結する簡易な月次資料なら、どのくらいで出せますか」

返ってきた答えは、月初2〜3営業日でした。

必要な数字は、既に社内にあったわけです。売上は販売管理システムから出る。仕入も出る。人件費もわかる。減価償却や税務調整を抜きにすれば、簡易な月次資料は自社だけで作れる。

遅かったのは、税務・会計として正確な数字を待っていたからでした。

ここで押さえるべき区別があります。正確な試算表は、税務申告と対外的な報告のためのもの。経営判断に使う数字は、打ち手を決めるためのものです。

求められる精度が違います。前者は1円まで合っている必要がありますが、後者は「粗利率が前月より2ポイント落ちている」ことがわかれば、確認すべき場所は特定できます。

「粗い数字で判断していいのか」への答え

ここで必ず出るのが、この疑問です。

「償却も入っていない、ざっくりした数字で経営判断をして、間違った方向に進まないか」

私の考えはこうです。

償却抜きや粗利ベースの簡易な月次資料も、誤った数値でミスリードするものとは考えていません。あくまで前提を示したうえで資料を提示することで、ミスリードは相当程度防げます。まずは何らかの数値を使って意思決定していく、という習慣づけをしたい。

前提を明示すれば、粗い数字は危険ではありません。「これは償却を含まない数字です」と資料に明記し、口頭でも毎回添える。それだけで読み手は正しく解釈できます。

危険なのは粗い数字ではなく、前提が示されないまま独り歩きする数字の方です。

そして、より大きな問題があります。数字が出てこないこと自体が最大のリスクだ、ということです。2か月前の正確な数字と、3営業日で出る粗い数字。経営判断に使えるのはどちらでしょうか。

まず「数字で決める習慣」をつくる

経営管理の仕組みを入れるとき、私が優先しているのは精度ではありません。100点を目指して時間をかけるより、速やかに出せる業績管理の仕組みを先に走らせることを優先しています。

理由は3つあります。

  1. 早く成果を刈り取れる。数字が早く出れば、それだけ早く手が打てる
  2. 社内を巻き込める。「経営管理をやると、こういう良いことがある」と実感してもらえる
  3. 有益であることを実証できる。仕組みづくりは負担を伴うので、先に効果を示す必要がある

最初から完璧な原価計算システムを設計しようとすると、稼働までに半年から1年かかります。その間、現場には負担だけがかかり、成果は何も出ません。たいていはそこで頓挫します。

粗くてもいいから、まず動かす。動いてから精度を上げる。

精度を上げるタイミングは、社内から要求が出たとき

では、いつ精度を上げるのか。

私が基準にしているのは、社内から「もっと細かい数字が見たい」「もっと正確な数字が見たい」という声が出てきたときです。

粗い数字で議論を始めると、必ずこうなります。

「この部門の粗利が落ちているのは、どの製品のせいなのか」 「この数字、減価償却を入れたら本当に黒字なのか」

この問いが現場から出てきた時点で、次の段階に進む準備ができています。逆にこの声が出ないうちに精度を上げても、使われない資料が増えるだけです。

もちろん、支援する側から「そろそろこの精度を上げませんか」と提案することもあります。ただ基本は、需要が生まれてから供給する順番だと考えています。

まとめ

月次の数字が遅いのは、税務・会計として正確な試算表を待っているからであることが多い。正確な試算表と、経営判断に使う数字は求められる精度が違うので、分けて考える必要があります。

社内で完結する簡易な月次資料なら、月初数営業日で出せることが多い。必要なデータは既に社内にあります。

粗い数字は、前提を明示すれば危険ではありません。危険なのは、数字が出てこないことの方です。

まず「数字で決める習慣」をつくる。精度を上げるのは、社内から要求が出てきてからで構いません。

数字が出るのが遅いという課題は、多くの場合システムの問題ではなく、「何のための数字か」が整理されていないことが原因です。


※ 本記事は実際の支援案件をもとにしていますが、企業の特定を避けるため、企業名・個人名を伏せ、日付や部門構成などの属性は変更しています。経営管理上の構造や判断の内容は、実際の事例に基づいています。

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