資料はそろっているのに、会議で何も決まらない
経営者の方から、こんな相談をよく受けます。毎月の会議に向けて資料はしっかり用意している。数字も分析も一通りそろえている。それなのに、会議が終わってみると、肝心のことは何も決まっていない。
資料は年々厚くなっていきます。準備にかかる時間も増えていきます。それでも、意思決定は前に進みません。次回こそはと情報を足すほど、かえって会議は長くなり、結論は遠のいていきます。
一度に処理できる量には、上限があります
この状態の原因は、資料が足りないことではありません。多すぎることにあります。
一度の会議で人が受け取れる情報の量、そしてその場で下せる意思決定の数には、はっきりとした上限があります。ところが資料を作る側は、抜け漏れを恐れて網羅性を高めようとします。あれもこれもと論点を並べた結果、どの話も中途半端に触れて終わり、判断の軸が定まらないまま時間切れになります。
情報が増えるほど、参加者の注意は分散します。一つひとつを深く考える余裕がなくなり、決めるための会議が、報告を聞くだけの会議に変わってしまいます。
4枚の分析を、1つの流れに置き換えた
以前、ある会社の経営会議に向けて、資料を組み立て直したことがあります。
もともとの資料には、根拠となるデータを示す分析が4枚、それぞれ独立して並んでいました。どれも正確で、手間もかかった資料です。ただ、4枚を順に説明していくと、聞き手はデータを追うことで精一杯になり、肝心の「で、何をするのか」にたどり着く前に力尽きてしまいます。
そこで私は、この4枚を独立した資料として見せるのをやめ、業績に効く3つの打ち手という一本の流れに差し替えました。データはそれぞれの打ち手の根拠として、流れの中に織り込みました。
会議の目的は、データを眺めることではありません。経営者がその場で打ち手を選び、次の一手を決めることです。目的をそこに置くと、資料の形も自然と決まってきます。
資料は、目的から逆算して削る
この判断について、私はこう考えています。一度の会議でそれほど多くの入力も意思決定もできるものではないので、その会議の目的に即して優先順位をつけて資料を作っています。出発点を「知っていることを全部載せる」から「この会議で何を決めるか」へ移すということです。
決めることが先にあって、その決定に必要な情報だけを、必要な順に並べます。この順番を守るだけで、資料は薄くなり、論点は絞られ、会議は決まる場に近づきます。
網羅性は、保存して後から参照する資料には必要です。けれども、その場で意思決定するための資料に、網羅性はむしろ邪魔になります。二つは役割が違います。会議で配るものは、決めるための資料に徹してよいのです。
会議の質は、情報量ではなく設計で決まる
もし会議のたびに資料が厚くなっていると感じるなら、一度立ち止まってみてください。その会議で何を決めたいのかを、一文で書き出してみてください。そして、その決定に直接効かない資料は、思い切って外してみてください。
外した資料を捨てる必要はありません。参照用として別に残しておけば十分です。会議に持ち込むのは、決めるために要るものだけにします。それだけで準備の時間は減り、会議そのものも短くなり、そして何より、決まる会議に変わっていきます。
数字をそろえることと、その数字で決めることは、別の作業です。多くの会社は前者に力を注ぎ、後者の設計を後回しにしています。会議が空回りしていると感じるときこそ、資料を足すのではなく、目的から引き算する場面かもしれません。
次の会議の資料を、目的から逆算して削るとしたら、どのページが手元に残るでしょうか。
※ 本記事は実際の支援案件をもとにしていますが、企業の特定を避けるため、企業名・個人名を伏せ、日付や部門構成などの属性は変更しています。経営管理上の構造や判断の内容は、実際の事例に基づいています。
株式会社シザコンサルティングでは、中小・中堅企業の経営管理の仕組みづくりを支援しています。会議に資料はそろっているのに、なかなか結論が決まらないという状態に心当たりのある方は、無料相談をご利用ください。